「打点」をとるか、「強さ」を取るか…スイングのジレンマ

スイングのジレンマ…打点を意識すればスイング幅が短くなり(上)、強さを意識すれば打点が下がります(下)
  先程出した写真Aのようなフォームの選手はボールを打つときに常に次のような二者択一に迫られます。
「打点を下げない」という意識をしている選手は肩のスイング幅を小さくして、肘を固定する「手打ち」のスイングとなるのでボールの強さを犠牲にしなければなりません。
「強いスパイクを打つ」という意識をしている選手は肩のスイング幅を大きくしようとしますので、打つときに肘の位置が下がります。強いボールが打てる代わりに打点は下がってしまいます。
   まさにあちらが立てばこちらが立たずというスイングのジレンマに陥ってしまいます。このようなジレンマを抱えた写真Aのスイングは決して良いスイングとは言えず、改善の余地があるスイングであることがわかります。

打点もスイング幅がカギ

バックスイングの肘が下がると打点が下がる？
  イラストは古い本にあった肘の位置に関してのアドバイスです。打つときの打点が下がる原因として、バックスイングにおける肘の位置が低いことを理由にあげるのはこのイラスト以外でも多く見受けられます。
  写真はイラストとほぼ同じ肘の位置の選手のバックスイングとボールヒットの瞬間を写した物です。バックスイングにおける肘の位置が低いものの、ボールヒット時にはしっかりと肘が伸びて高打点でヒットされています。この写真を見るとバックスイングにおける肘の高さと打点の高さは直接は関係がないことにわかります。
スイングは違っても経路の最後は重なります
  ストレートアームスイングのようにスイング幅が短く、降り下ろすスイングでは、はじめの肘の位置を高くしておかなければスイングにつれて、腕が下がっていき打点も下がります。このようなスイングをする選手には「肘の位置を高く」というアドバイスは的を得ていると言えます。しかし、もしスイング幅が長ければバックスイング時に肘が低い位置からスイングを開始しても、スイングの過程で肘の位置を上げていくことが出来るので打点の高い位置でボールを打つことができます。イラストで見るようにバックスイングの時の肘の位置が変わっても、最後の部分ではフォームが重なって来ます。ストレートアームスイングはボウ・アンド・アロウ・アームスイングやサーキュラー・スイングの一部を切り出して打つスイングという言い方も出来そうです。

おわりに

  今回は「肘が曲がる、打点が下がる」という欠点について考えてみました。原因を考えていくにしたがい、スイング幅を長くすることが「肘が曲がる、打点が下がる」欠点を修正する方法であることに思い当たりました。実際には肘の曲がる欠点の原因はこれだけではないと思いますが、少なくとも原因の一つであることは間違いありません。


「壁」を使ったスイングチェック…同じ「壁」を使っても出来上がりのフォームは違ってきます
  上の写真はバレーボールの指導書、下の写真はバドミントンの指導書に出てきたスイングのチェック法です。ともに壁を使っていますが、指導する側の視点が異なり、全く違ったものになっています。バレーボールの写真では腰の反りを使った窮屈なスイングが行われていますが、バドミントンでは腕を振る自由度が高く、スイング幅を長くする事が可能なスイングです。簡単に言えば初めに壁に壁に体のどちらの面を向けているかという点の違いですが、出来上がりのフォームは自ずと違ってきます。この指導法の違いはスイングに対する理解度の違いが現れていると言えます。


流れるような美しいフォーム