奇妙なスイング

奇妙なスイングのイラスト
  昔の指導書にあったスイング解説のイラストです。一目見たときから、何か変な感じを覚えました。「どうしてだろう」としばらく見ていて気づいたのは�Aのカットだけ選手の横顔が見えていることでした。�Aの前後の�@と�Bのカットでは顔が腕に隠れて見えません。三枚のカットを並べてみてると連続動作とは思えない不自然さがこのイラストから漂って来ます。
肘が下がり、また上がるスイング…こんなことが実際にある？
  選手の横顔が見え隠れすることを腕の動きの視点からとらえてみましょう。�@→�A→�Bの順に腕の動きを見てみると

        「前方に振られた上腕が、再び後方に振られている」

ということが起きています。このように腕が前後にぎくしゃく動くことが実際のスイングで起きているとは考えられません。あくまでも説明用のイラストですので、実際のスイングを正確に描いているとは言えないのですが、なぜ、実際ではあり得ない動きがこの本に描かれてしまったのでしょうか？

  憶測の話となりますが、イラストを指示した著者の頭の中には「ボールヒットでは肘を伸ばして、最も高い打点で打たなければならない」という考えがあり、�Bのイラストをイラストレーターに描かせたのだと思います。しかし、その前の段階�Aのイラストの腕が�Bの腕よりももっと前方に振られて描かれていたことには気づかなかったのでしょう。スイングのありのままの姿を描写するよりも「こうあるべき」という考えが先行してしまい、それがイラストに現れてしまったのだと思います。

「良いスイング」と「悪いスイング」

古い指導書にあった「良いスイング」の例(写真A)
  別の本にあったスイングの説明写真です。モデルに動きの指示をしてスイング動作をさせて一枚の連続写真としたものだと思います。この写真はこの著者が良いスイングと考えているフォーム例の写真で、スイング開始時の肘の位置もボールヒット時の手の位置も高くなっており、先程の本にあった「ボールヒットでは肘を伸ばして、最も高い打点で打つ」という考えを実現しています。


古い指導書にあった「悪いスイング」の例(写真B)
  次の写真は著者が悪いスイングと考えているフォームの例の写真です。スイング開始時の肘の位置が低く、ボールヒット時も打点が低いスイングとなっています。バックスイングがほとんどなく、修正を必要とするスイングであることは確かです。
この二枚の写真を比べるのであれば写真Aのスイングが優れていると言えそうです。しかし、これはあくまでも二つの例を比較した上での評価ですので、写真Aのスイングが本当の意味で優れているスイングであることを述べるにはもう少し検討が必要です。

肘が曲がる、打点が低い

「肘が曲がる、打点が低い」スイングは悪いフォームの代名詞
  写真B に見られるような
            肘が曲がり、打点が低い
スイングは「悪いスイング」「修正すべきスイング」の例としてしばしば取りあげられて来ました。肘が曲がれば肘の位置が下がって見えるので「肘が下がったスイング」と言われる時もあります。一流選手は肘がキッチリと伸びて、高い打点でボールをヒットしています。肘が曲がったスイングは打点を損しているだけでなく、肘の伸展の力がボールに伝わらないので力の面でも損をしています。「肘が曲がり、打点が低い」スイングは確かに修正すべき悪いフォームであると思います。
  どうしたら「肘が曲がり、打点が低い」悪いフォームは修正できるのでしょうか？写真Aと写真Bを例示した著者は次のような矯正法を述べています。
(1) (バックスイング時に)きき腕の肘が耳のうしろまでくるようにする。肩の関節が硬い選手の場合は重い鉄アレイのようなもので振り上げ運動をする。きき腕の鉄アレイを大きく後に振り上げると惰性で自然に肘が耳の後方に引けるようになる。
(2) 肘を振り出すのではなく、耳の横で固定して肘から先を振り、肘を伸ばして手首のスナップでボールを打つ。
�Aの写真のフォームの選手が(1)と(2)のアドバイスを実践すれば確かに�@の写真のフォームになりそうに思えますが…。